注目されるRPAの導入・活用、その成功のために
社会の複雑化、サービスニーズは拡大する一方にあって、日本を含めた先進国を中心とする各国では、少子高齢化が急速に進行し、生産労働人口が減少、労働をめぐる問題がさまざまな点で表面化してきています。長時間労働の問題や慢性化する人手不足、人件費の高騰など、最近の国内情勢をみても、関連する問題は枚挙に暇がありません。
国も「働き方改革」を掲げ、持続的な成長を維持できる労働生産性の向上、国際競争力の強化、人々が適材適所でいきいきと効率よく働ける社会の仕組みづくりを急いでいますが、実際の取り組みはまだ始まったばかりといえます。
そうした中、国内外でRPA(Robotic Process Automation)というキーワードが注目度を急速に高めています。RPAは、労働の現場におけるホワイトカラーの業務プロセスを自動化するソフトウェアロボットで、「働き方改革」が目指すような生産性の向上、業務効率化による労働者の負担軽減を、最新のIT技術によって実現させようとするものです。
RPAへの関心の高まりから、多様なベンダーが登場し、提供される製品やツールは飛躍的に増加、市場規模も急速な伸長をみせてきました。RPAは、“Digital Labor(仮想知的労働者)”ともされ、今後のビジネスでは、これをいかに上手く導入し、活用していくかが重要となってくるでしょう。
しかし一口にRPAといっても、さまざまなタイプがあり、業種業態、切り出す業務に適切なものを選定して導入できるか否かが成否を分けるポイントになります。よって、まずはその違いを見抜ける知識を身につける必要があります。
今回はその一歩として、RPAのシステム形態による種類別があることを紹介し、サーバー集中管理型について解説していきます。ぜひ導入に向けた参考としてみてください。

目的や運用を考えて形態・環境を選定!
RPAは大きく分けると、個別の端末にRPA製品をインストールして用いる個別デスクトップ型、クライアント型と呼ばれるタイプと、サーバーにインストールして集中管理を行うサーバー型とされるタイプの2つがあります。
個別デスクトップ型の特徴
前者はインストールしたPCで、開発も運用も完結するものとなりますから、自動化できる規模は小さく、適応範囲は一定のキーボード操作やマウス操作などの実行に限定されます。端末を扱う担当者の裁量でカスタマイズすることにより、幅広い作業に適用させられる点や、比較的安価に初期投資を抑えて導入できる点などがメリットとしてありますが、導入台数が多くなればそれだけ購入する製品数、ツール数も比例して増え、コストが増していくこと、個々の稼働状況などを社として管理することが難しく、ガバナンス面に問題が生じやすいことがデメリットとしてあるでしょう。
小さな規模の事業者で、バックオフィス業務に限定し、PC作業の一部を自動化するなら、このRPAも向きますが、大量のデータ処理や業務全体の自動化、プロセスとしての効率化を目指すことはできません。
サーバー型の特徴
こうした本来のRPAが目指すあり方を実現させるには、システム形態としてサーバー集中管理を行うサーバー型を導入する必要があるでしょう。サーバー型の場合、部門を超えて処理する必要のある業務も、端末をサーバーでつなぎ、システムとして構築した上で、その中央サーバーにRPA製品をインストールすれば、シームレスで柔軟、規模の大きなものまでカバーするニーズに合った自動化を図ることができます。
ソフトウェアロボットがサーバーに住むかたちとなって、バックグラウンドで働きますから、クライアント型のように、動作している間は人が同じアプリケーション上の操作を行えないといったこともなく、マルチな並行処理が可能で、より高速な業務処理を一貫したプロセスとして実行させられます。
初期投資がやや高くなりがちであるほか、環境整備・開発として時間とコストがより多くかかる点にデメリットがありますが、集中管理型として、稼働状況やスケジュールの一括管理が容易な点は大きなメリットとなるでしょう。
Digital Laborとして幅広く高度な利用を見込んでいるなら、その適正な運用・管理はきわめて重要な課題です。端末個々の利用者・担当者に管理を完全にまかせてしまうと、セキュリティやコンプライアンスの徹底という観点、ガバナンス面に問題を生じやすくなることが懸念されますが、集中管理型であれば、スキルと責任をもった担当者の一括管理で透明性を高めやすく、安全で安定的な運用を実現しやすいと考えられるのです。
サーバー型ならば、企業間連携やサービス間連携、IoT領域での利活用など、適用範囲や応用のかたちも格段に幅広くなります。ただし運用する中でブラックボックス化しないよう、ベンダーに任せきりにしない、チェック方法をきちんと決めておくといった基本を忘れてはいけません。
多様化するカタチ、よく比較して検討を!
このように紹介してきましたが、近年はサーバーなしでも、導入端末の遠隔管理が可能で、ガバナンスを目的としたログ出力を処理に追加させるなどのコーディングも行えるようなRPAも登場してきました。
個別クライアント型でも完全なサーバー集中管理型でもなく、サーバー・クライアント型としてミックスされた、Web操作はサーバー実行、アプリケーションはクライアント実行の形態をとるものもあります。ハイブリッドタイプともいえる、両面での設定・利活用が可能なこれらのRPAを選択し、改善したい業務状況に合うシナリオを作成していくのもよいでしょう。
いずれにしても、将来まで見据えた運用計画として、どれほどのスケーラビリティを必要とするのか、セキュリティやコンプライアンス対応、内部統制はどのように図るのか、費用対効果はどうか、自社内での設定変更やトラブル対応は可能かといった点を総合的に判断し、多様なRPAの特徴を知って比較、最適なRPAを選定していくことが重要です。
まさに“Digital Labor”として、共に働く次世代オフィスの新たな労働力としてとらえ、自社とのマッチングがよいものを選定すること、そして雇ってからの実運用における管理を適正に行うこと、それがRPA導入の成否を決めるところとなります。知識をもって慎重に検討しましょう。
(画像は写真素材 足成より)