話題のRPAがさらに進化したら?CAを知ろう

生産性向上に寄与するRPA、未来のオフィスのカタチがここに!

近年は先進国を中心に、少子高齢化と人口減少に伴う生産労働人口の著しい減少が発生し始め、社会における一定の経済成長や国際競争力を維持・強化していくだけの労働力を確保することが難しくなってきています。

蓄積された技術やノウハウの継承はもちろん、単純な人手不足、人件費の高騰に頭を悩ませている企業は少なくないでしょう。より優れた人材を確保するにはどうすればよいか、また離職率低下のためにはどんな策を講じればよいか、現場でのさまざまな工夫が続いています。

こうした中、人手不足を違ったかたちで補いながら、生産効率を高めるものとして、Digital Labor(仮想知的労働者)として働くRPA(Robotics Process Automation)も高い注目を集めるものとなりました。

ホワイトカラー業務の自動化、代行サポートを実行するRPAは、適用範囲とできる仕事の難易度、進化の度合いによって3段階に大別でき、それぞれ狭義のRPA、EPA、CAの違いがあります。今回はとくにその最終形態ともいえるCAを中心として、RPAの果たす役割と今後について考えていきます。

指示通り反応するRPA、ディープラーニングで高度な意思決定までサポートするCA

RPAは、これまでならば人間が行ってきたものの、コンピュータ上の定型業務で手間や時間がかかっているもの、反復の多い作業で工数がかさむもととなっている操作処理などを、ソフトウェアのロボットで自動化、的確に無駄なく処理させるものです。

産業用ロボットが人間の手足といった身体を用いる労働、ブルーカラー業務を代行し、危険作業や負荷の重い作業、反復作業から人間を解放し、高速化と正確な作業実行を実現させていったように、オフィスのホワイトカラー業務、コンピュータ操作の自動化・代行を可能とする機能をもつのがRPAです。

繰り返しの入力作業やデータの突き合わせ、伝票作成、顧客データ管理、システム監視、情報収集に検証作業など、さまざまな業種業態におけるオペレーションをRPAに担当させることが可能で、人手不足の問題を解消できるほか、削減された人件費により新規事業への投資や価格競争への対応も可能になると期待されています。

現在、最も導入が進んでいる、RPAの最初期段階といえる狭義のRPAは、指定された動作を高速かつ確実に実行することができますが、エンジンにあらかじめ設定されていないルールの事象、イレギュラーなケースに直面すると、対応できなくなってしまいます。

Excelのマクロ機能などと違い、複数のアプリケーションにまたがった、横断的作業の実行が可能という点で、より実用的であり、高い利便性を発揮するものとなっていますが、データの構造化や適応させる業務の様式変更などに対する動作設定変更は、その都度人間が実行しなければならず、やや手間がかかります。具体的に指示されたことだけしかできない仮想労働者ですから、使い方に工夫が必要であり、適用範囲がある程度限定されるのです。

第2段階のEPA(Enhanced Process Automation)は、“Enhanced(強化された)”という言葉が示すように、RPAではカバーできなかった非定型業務の一部も担えるようになります。役割は拡張され、さまざまなデータを収集、マシンラーニングで規則性を見出し、判断して行動することが可能となります。

RPAの機能にAIが組み合わされており、簡単な判断を伴う業務の自動実行、非構造化データの読み込みや知識ベースを活用した処理などが行えるのです。イレギュラーなケースにも対応できる力が機能として備わった点が第1段階のRPAと大きく異なる点です。

そして今回スポットをあてる、より進化したタイプ、第3段階になるのがCA(Cognitive Automation)です。“Cognitive”は“認知”を意味する言葉であり、人間の認知機能を有するようなRPA、第2段階のEPAよりさらに高度なAIと組み合わさったソフトウェア・ロボットになります。開発は積極的に進められていますが、今なお発展途上の技術で、実用化はごく一部の事例しかありません。

人間の指示や提供データをもとに、自律的な判断で動作、業務の処理を行う点はEPAと同様ですが、その高度な処理能力はRPAの中で明らかに一線を画すものといえます。自然言語認識と解析、画像の認識・識別・解析、音声解析といった機能を有するのはもちろん、それら機能を働かせて収集したビッグデータからディープラーニング(深層学習)により自主的に学習と成長を続けていく力をもっています。

CAが導入されるとどうなる?

たとえば、気候変動など複雑で多岐にわたるデータから最適と考えられる仕入れ状況を管理・実行したり、世界の市場動向を左右する経済・政治情勢を加味した経営判断を下したりと、人間の管理者が行うような高度な意思決定やそのサポート、助言を行うことができるようになります。

また対人対応では、相手の感情や置かれている状況に配慮したメッセージを作成するなど、ナチュラルで個別に最適なコミュニケーションを実現していけると考えられています。

実行されている作業プロセスについて、自ら分析を行って最良となる改善方法の検討を繰り返したり、その結果として導かれた方法による処理の再実施を行ったりすることも可能です。ツールという領域を脱し、まさに頼れるパートナーとして進化した“Digital Labor”がCAなのです。

CAのような水準のRPAが導入されると、人間の活躍する場がなくなる、仕事が奪われると心配される向きもありますが、実際に導入・運用を決めるのは人間であり、任せる業務を切り出して役割を与えるのも人間です。

むしろ人間からは生まれてこない発想や、偏見・先入観による経営判断ミスの防止など、有益な助言を人間のように高度な水準で実行してくれる優秀なデジタル人材、ビジネスパートナーを得られると考えれば、そのメリットの大きさが強く理解されるでしょう。

人間は、苦手とする分野を補ってもらい、当初からの本来業務に集中したり、まったく新たな分野の開拓に力を入れたりすることが可能になります。コンプライアンス違反につながるようなトラブルの防止や、情報漏洩リスクの低減といった効果も得やすくなると考えられ、次世代ビジネスの展開には欠かせないものとなるかもしれません。今後の開発動向に注視しながら、賢くRPAの適切な導入と活用を図っていくことこそ、重要になるでしょう。

(画像は写真素材 足成より)