進化するRPA、EPAでは何ができるのか

人口減少・人手不足時代の救世主!RPAが進化する

少子高齢化に伴う労働人口の減少などを背景に、人件費の高騰や人手不足が深刻化する中、単純作業を中心にホワイトカラー業務のコンピュータによる自動化を図り、労働生産性を向上させようという取り組みが進行してきています。

この業務自動化は、RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれ、導入・活用によって、これまでよりも圧倒的に少ない人数で事務作業を処理するなど、生産力を高められると考えられ、高い注目を集めているものです。より安価な労働力を海外や非正規などに求めるスタイルから、ICTによる解決を図るスタイルへのシフトともいえ、“Digital Labor(仮想知的労働者)”といわれることもあります。

2017年の調査では、国内で14.1%の企業がすでに導入を開始、6.3%が導入中で19.1%が検討中となっています。市場規模の拡大も著しく、2017年度は31億円、2021年度には100億円規模になるとも予測されました。先進国を中心に、世界でも急速な普及拡大がみられており、市場は年率約40~60%という驚異的な成長を継続、2020年には5,000億円規模になると見込まれています。

この次世代ビジネスシーンの鍵を握るRPAですが、そのテクノロジー水準には大きく分けて3つの段階があるとされ、上に行くほど、より人間に近い判断力や自律的な学習能力を発揮、複雑な業務にも対応できるようになるといわれています。

そこで今回は第1段階のRPAを踏まえ、そこから進化した第2段階のEPAについて、どんなことができるのか、各企業において担っていくであろう役割などをみていくこととしましょう。

指示通り実行するRPA、判断するEPA

現在、導入企業の多くで実際に活用されているのは、そのほとんどが最も初期段階に位置するRPA、第1段階のRPAで、Excelのマクロ機能と似た、コンピュータ上の定型業務を指示通り実行させる、単純な自動化のソフトウェアロボットです。マクロとの違いは、同一のソフトウェア内だけでなく、複数のアプリケーション、サービスを組み合わせた状態で動作できる点にあります。

第1段階のRPAは、情報収集作業やデータ入力業務、効果検証作業など、複数アプリケーションの連携を必要とするものの、決まった動作を繰り返し継続的に行うような作業を得意とします。人間のように休みを必要としませんし、膨大な量を対象としても、ミスなく確実かつ高速で処理してくれます。

しかし、処理エンジンに判断基準や具体的対処方法をシナリオとして設定して動かすため、イレギュラーな事態が発生すると対応できなくなります。ここが第1段階のRPAにおけるウィークポイントであり、限界といえるでしょう。

これに対し、今回注目する第2段階のEPA(Enhanced Process Automation)は、そうしたイレギュラーなシーンにも対応する力をもち、非定型業務の一部を実行することが可能です。この点が大きな進化であり、それはRPAとAIの技術連携によって実現されるものです。

第1段階のRPAがルールとして構造化されたデータしか取り扱えなかったのに対し、EPAは構造化されていないデータの収集・分析も行えます。大量のデータを取り扱う中で、自らその傾向などを学習し、AとBは頻繁にセットで処理される、AとCは類似の事象であるなど、より柔軟で高度な処理動作を可能とするアルゴリズムを構築していく機能が搭載されています。

これにより、あらかじめ設定されたシナリオ、ルールに従うだけでなく、ロボットが自身で判断して、ひとつの動作を行いながら次の処理の準備も進めるなど、人間によって与えられた指示をベースとしたより高度でスムーズな動作、例外対応も含めた業務の自動化実行が実現されるのです。

近年、発達が著しいAIを活かしており、人間の“目”にあたる画像認識・解析機能や“耳”にあたる音声分析機能、自然言語解析機能、マシンラーニング技術を搭載、主にビッグデータの収集目的で、人間の感覚器官や脳の一部活動に該当する機能を用いるのが、EPAの特色といえるでしょう。

具体的にはどんなふうに活躍する?

すでにEPAとして実用化されている例では、請求データの登録処理を一連で自動化するものがあります。請求書のスキャンから画像・文字認識で書式と数値を判断、各項目を整理して取り込み、データベースへの自動入力まで完了させるというものです。

過去に取り込んだことのない書式による請求書であっても、類似した請求書の処理経験をもとに判断し、取り込みを実行したり、テキスト化した結果と過去データとの照合を行って誤認識を自ら修正するための検証と処理を行ったりすることが可能で、人間が携わっていた業務のかなりの部分を代行することができています。処理精度も99%を超えるといわれていますから、十分にビジネス利用に耐えうる水準となっているでしょう。

このようにEPAは、単純で機械的・定型的な処理の領域にあったRPAから、知覚・知識・経験を伴って判断する作業の領域にまでカバー範囲を拡張しており、より高度な役割を果たすことができます。

一例として紹介した財務処理分野だけでなく、人事やIT関連、問い合わせ対応などでも活躍するでしょう。企業の業種業態や規模に関わらず、さまざまな適応が考えられ、まさに“Digital Labor”として機能させられるようになります。

何をどこまで任せるのか、当面は費用対効果や技術面との相談になりますが、RPA、そして進化したEPAを導入することにより、業務の効率化と生産性の向上、ミスの低減が実現可能です。代替できる業務をこれらへ移行させることで、人間の労働者はより創造的な業務や深い思索を必要とする作業、高度な判断や意思決定、細やかな対人コミュニケーションなどに集中して取り組めるようにもなるでしょう。

煩わしさから解放された、より本質的な業務・作業への集中、そうした労働環境を整え、人間とロボット、コンピュータの理想的な共存が図られていくことが望まれます。

(画像は写真素材 足成より)