RPA導入はいかに進めるべきなのか?現場最前線

注目のRPA、その導入ノウハウとは?

主にホワイトカラーが担ってきたバックオフィスにおける定型作業を自動化し、人材不足など労働をめぐる課題に対応するソリューションとして注目を集めているRPA(Robotic Process Automation)。これからのビジネスでは、必要不可欠なツールとなる可能性が高く、先進的な企業を中心に導入への検討が加速的に進んできています。

一方で関心はあるものの、導入プロセスを具体的にイメージすることが難しいため、対応や判断に苦慮しているという事業者も少なくないでしょう。そこで今回は検討の開始から導入、運用フェーズまで、一連のプロセスにおいて押さえたいポイント、身につけたいノウハウをまとめていきます。

RPAは、構造化されたさまざまなデータを収集・統合し、複数のアプリケーションにまたがった入力処理作業を迅速かつ的確に実行するなど、繰り返しの多いホワイトカラーの間接業務を自動化することに適したテクノロジーです。

しかしその搭載される機能などによって3つの段階があり、ごく単純な自動処理に限定されるクラスから、イレギュラーな事態にも対応、ビッグデータの処理・分析で柔軟な業務処理もカバーできる中等度のクラス、高度な機械学習機能、認知機能を有し、自立した判断や最適な選択の提案を行うきわめて高度な水準のクラスまで存在します。

最高クラスのものについてはまだ発展途上や実験段階で、現実的な活用は初期クラス、伸びがあっても2番目のクラスのRPAになっているのが現状であり、安定性やコスト、実務との親和性などから、まずどのレベルのRPA導入を図るのか、見定めることが必要です。

全体計画・机上検証など初期段階の進め方

RPAに限らず、新技術・新ツールの導入として、まずは全体計画が必要でしょう。RPAの導入で見込める効果は、業務の自動化による効率化であり、それによって浮いた労働力、人的リソースをより創造的な分野や顧客接点分野、事業の中心をなす領域に振り向けられるということがまず挙げられます。

また、単純に人件費の削減などによるコスト削減、作業スピードの改善と処理量の増加による売上拡大も目指せるでしょう。こうした狙いが、RPAの全社的な導入における計画の戦略になりますが、場合によっては業務の標準化につなげることでグローバル化を推進するなど、別の目的を見出すケースもあり得ます。

まずは全社で達成したい目的、経営戦略を明確にし、そこから具体的な計画を立てていくことが大切です。RPAは既存のシステムにサーバーなどのレベルでのせるものとなりますから、その仕組みや運用を熟知しているIT部門と、戦略策定やデジタル分野を担う技術部門とが協力し、中長期での計画を練っていくとよいでしょう。

どの事業における業務をどの程度までカバーさせるか、導入する部門の順番を決め、その中で候補となる業務の重さ、難易度によるクラス分けを実施、定型/非定型の分類を行って典型的な定型業務から始めるのが、ステップとしては王道でしょう。

こうしたステップとともに、実際に利用するRPAの選定に関しては、これまでに導入してきたIT関連ツールと同様、複数のベンダーからの提案を受けながら選定を進める、海外の先行事例など業務運用の実績があればそれも参考にして検討する、PoCを通じて評価した上で決定する、といった流れが基本になると考えられます。

こうした企業全体での導入にかかる全体計画を、まずは大枠として作り、検証や評価、選定の意思決定など、プロセスの進行に伴ってより具体的で密なものにしていく、詳細を詰めていくとよいでしょう。

計画にも大きな影響を与える検証については、机上検証を2段階で進めることをおすすめします。まず第1段階で現状の業務フローと手順書、マニュアル、各種実績値などのデータを準備し、導入後の業務フロー、業務俯瞰表を作成します。業務にかかる人数や標準時間の違いなどから効果を検証、適用業務の選定と経営会議向けの基礎データ、予算立案や投資のためのデータを作りましょう。

第1段階でいったん、経営会議での承認を経て進むのもよいと思われます。第2段階ではより詳細な検証として、オペレーションレベルでの実装に向けた準備チェックを行います。細かな業務アクションごとの現行と導入後の比較を実施し、システムの要件定義にも展開できるようなフロー表を作成しましょう。

例外処理やセキュリティ、運用などの面における検証も並行して進めるとよりよいですね。この机上検証が密に行えていれば、事前に効果を算出し最適な導入が図れるだけでなく、全体のシステム構築も優れた完成度へと導いていけるでしょう。

PoCの進め方、導入後の運用について

やや順が前後しますが、計画でも参考にするPoCの進め方を次に解説します。PoC(Proof of Concept・概念実証)は、新規アイデアなどがITで実現可能か検証するもので、実証実験としてなされることもあります。

RPAのPoCでは、まず導入する業務の洗い出しがまだの場合は、そこから開始します。現行の業務からRPAでの代行が可能なオペレーションを決定し、机上検証でどの程度、人手やコストの削減が見込まれるか算定しましょう。

業務の分析に基づいてシナリオ設計を行い、そのシナリオの作成と検証を行うためのデスクトップシステムを用意します。そして実際に動かしてみて、人が担当していた業務のRPAによる置き換えが確実に達成できているか、見込んだ効果が数値として得られているか、結果を確認します。

エラーの発生など、問題点が見つかれば、シナリオに修正を加えたり、より適したRPAソフトウェアはないか探し直したりすることが必要です。判断においては、ここまで達成できればOKというラインをきちんと引くことが重要で、RPAの対応レベルと構築にかけられる時間や範囲、投資対効果など、実務導入に向けて冷静なチェックを重ねていきます。

実行することで見えてくる課題や発見は多くありますから、トライアルサービスなどを活用し、積極的にシミュレーションを行ってみましょう。

ここまでの準備が完了したら、一部で小規模な実運用を開始します。この期間はRPAによる処理をモニタリングし、定期的にそのオペレーション評価を行いましょう。得られた評価結果から、より適切な設定に改変するなど、修正も随時加えていきます。RPAの場合、修正を加えるのは比較的容易で、迅速にそれを反映、適用していけますから、この点を不安視する必要はほぼありません。

もちろん計画段階での業務内容とRPA設定がしっかり明確化されていることが前提であり、曖昧模糊とした導入、ルールなき運用では、トラブルへの対応や適切な修正が行えなくなってしまいます。運用の状況や目的は常に明確にしておきましょう。

小規模な運用で問題なく成果が得られれば、全社的に予定していた範囲までRPAの活用を拡大させます。拡大させることで新たに生じた問題点に対応しつつ、安定的な運用を定着させていきましょう。

いかがでしたか。個々のケースにより、導入プロセスのかたちは変化してくるものと考えられますが、およそこうしたステップを踏んでいけば、スムーズに進められます。注意したいポイントとしては、RPAで自動化する対象を初期から広げすぎず、優先順位をつけて適用・導入していくことが挙げられます。

現行のかたちにこだわらず、RPAを導入しやすいよう、作業プロセスのつながりや順序、スタイルを適宜見直し、変更してみることも有効です。エラーやトラブルの発生にも備えながら、RPAを新たなパートナーとして、導入・活用していきましょう。

(画像は写真素材 足成より)