どれを選べばよい?比較選定のポイントを知る
バックオフィス業務やサポート対応など、ホワイトカラーの単純な間接業務を中心に自動化を図るRPA(Robotic Process Automation)への関心が高まっています。作業スピードの向上や人材不足の解消、コスト削減、サービス改善など、さまざまな効果が期待されるRPAですが、乱立する製品・サービス群の中からどうやって導入候補を選定すればよいのか、迷われている企業も少なくないでしょう。
市場が成長し、選択肢が増加することはよいことですが、あわせて利用者側には、特徴を賢く見抜き、最適な製品を選び取る力が求められるようになります。そこで今回はRPAの選定時に参考としていただけるよう、その種類について整理・解説します。

プログラミング型とノンプログラミング型
まずRPAには大きく分けて「プログラミング型(開発型)」と呼ばれるタイプと、「ノンプログラミング型(画面設定型・テンプレート型)」と呼ばれるタイプがあります。
前者のプログラミング型の場合、汎用的プログラミング言語とAPIを用いて設定を行い、導入するため、複雑なプログラミングを一から実行する必要はありませんが、簡単なプログラミングの組み込みなどで、業務自動化にかかるアクション設定を行っていくことになります。
そのためシステム開発の専門家に求められるような高度スキルは不要ですが、ある程度のプログラミングにおける基礎知識や感性が必要でしょう。社内にそうした人材リソースがない場合は、新規に採用・育成するか、外部の専門業者に委託するといった対応をとる必要があります。
こうした一定の手間はかかりますが、適用範囲や動作環境、処理内容を柔軟に設計できるメリットがあり、現状に合わせたカスタマイズも行いやすいという特色をもっています。ごく単純な定型業務だけでなく、より幅広い業務、複雑な対応処理を含んだ自動化を検討しているならば、こちらがおすすめです。
これに対し、ノンプログラミング型では、処理手順を登録したルールベースや、命令を定義したマクロ、簡易的なプログラムのマクロなど、あらかじめ作成された“型”があり、PC画面上の操作を視覚的に記録設定するだけで、導入準備を整えることができます。
よってプログラミング型に比べ、より手軽な導入による自動化が可能ですが、その反面柔軟性に乏しいところがデメリットとしてあります。複雑な作業には対応させにくく、適用範囲やカスタマイズレベルがそのツールに大きく依存するところとなるため、導入戦略と合致するか、今後の運用を見据え、よく確認することが重要です。
およそ単純業務に限定した利用を想定している場合や、エンジニア・プログラマーが社内にいない、不足しているケースなどに向くと考えられます。なお動作環境が限定されているケースも多いため、既存社内システムとの関係にも、より注意しながら選定を進めるようにしてください。
サーバー型とデスクトップ型
また、これとは異なる分類基準として「サーバー型」と「デスクトップ型」の2種で考えることもできます。この2つの違いは、RPAツールをどこに入れ、どこで機能させるかにあります。
デスクトップ型は、その名の通りPC本体ごとにソフトウェアをインストールして用います。よって自動化の対象範囲、業務範囲がそのPCを操作する人の範囲に限定されることとなります。初期費用が安く、部門や個人、期間限定といった小規模レベルで簡単に導入できるメリットがある一方、大量のデータ処理に対応させることは難しいでしょう。
また、エラーに対し端末ごとで対応する必要があるほか、PCへの依存度が高いため、OSバージョンアップやプログラム更新などの影響を受けやすく、その対応業務負担が増大する可能性があります。RPAはそのPC本体のリソースを消費して動くため、実行中にそのPCの人による操作が行えなくなるなど、かえって別作業の進行を妨げ、効率を下げてしまうケースもあり得ます。
各導入PC内の作業連携のみとなるため、対象業務の規模を広げにくいほか、導入数に比例してPC台数を増やす必要があること、増えた分だけ多くのPCに関し、個々実行状況などの把握・管理を行わなければならない手間が発生することも考えておかねばなりません。
一方、サーバー型であれば、RPAが稼働する場所が個々のユーザー環境とは異なるサーバー上となるため、デスクトップ型にみられたデメリットの多くを解消できます。自動化できる対象業務の範囲は、サーバーがアクセスできる範囲ならば自由に広げられ、システム間連携など作業横断的な活用も容易です。個々のユーザーにおけるPC作業などへ影響を与えてしまうこともありません。
導入数が増えても、サーバー内で一括管理が可能なため、全社レベルでの統括管理がしやすい、大量のデータを自在に扱えるといったメリットもあります。ただしそうしたサーバーやネットワークなど、大規模なシステムを構築しなければならないため、導入に際しての初期費用がかさみやすいこと、情報システム部門などが参加した構成作業、環境設定作業がまとまって発生することがネックであり、デメリットとなるでしょう。
まずスモールスタートで試したい場合や、導入の容易さ・手頃さを優先したい小規模事業者などではデスクトップ型が向きますが、将来の拡大と高度化までを見据えた本格的な導入を検討するなら、サーバー型の選択になります。
ライセンス型とサブスクリプション型
これまでは仕組みで分類して考えてきましたが、契約形態の違いで比較することもできます。この場合、製品を買い取り、あとは保守・運用料金のみを支払う「ライセンス型」と、一定額の利用料金を毎年支払っていく「サブスクリプション型」の2種に大別できます。
ライセンス型のRPAでは、最初にそのライセンス(製品・サービス)を購入する仕様となるため、サブスクリプション型より初期費用が高めになります。しかし、2年目以降の負担はライセンス料の2割程度などで設定された保守・運用料金のみとなるため、ランニングコストを抑えることができます。よって長く利用すれば、ライセンス型の方が安くなってくる傾向にあるでしょう。
また、ライセンス型の場合、1ライセンスで利用できるロボットソフトの数が複数に設定されているケースが一般的ですが、サブスクリプション型では1ロボットソフトあたりの年間利用料といった課金制になるため、導入・稼働させる台数が多いほど、ライセンス型の方が累計コストを抑えやすくなります。
例えば、あるライセンス型RPAが、ライセンス料800万円、1ライセンスで10台まで利用可能、保守・運用料金は年間150万円だったとしましょう。これに対し、比較するサブスクリプション型RPAは、1台あたり年間利用料40万円という製品サービスになっていたと仮定します。
ライセンス型は初年度が800万円、2年目以降は150万円ずつかかり、累計コストとして2年目で950万、3年目1,100万、4年目1,250万、5年目1,400万となっていきます。
5台しか導入しないと、サブスクリプション型で年間200万円の負担ですみますから、5年経っても1,000万円でライセンス型よりお得です。しかしフルの10台を導入すると、こちらは年間400万円がかかり、3年目で1,200万円になるため、ライセンス型の方が累計コストで逆転、安くなる計算となります。
つまり、動かしたい台数と利用期間によって、どちらがよりリーズナブルかが異なってくるというわけです。拡大に向けた計画や導入規模、用途から導かれる利用年数見通しなどをもとに、ライセンス型かサブスクリプション型かを選択するとよいでしょう。
なおいずれの型を選択するにしても、多くのベンダーがトライアルサービス期間を設けており、無償の試用を可能にするなどしていますから、それらも賢く活用し、最適な導入スタイルを目指してください。
いかがでしたか。注目のRPAについて、種別分類を提示しながら整理、紹介を行ってきました。ぜひこれらの基準をもとに、ニーズにあったRPAを探してみてください。
(画像は写真素材 足成より)